収益率に使う平均とは? (算術平均と幾何平均)

こんにちは。
CFPⓇ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士の加藤博です。
期間が異なる投資成績を比較する場合は、収益率を年あたりの年利に換算した平均値にして比較します。
この年当たり収益率をみるときに「平均」を使用しますが、平均にも種類があります。
年あたりの収益率を平均値として算出する方法には、「算術平均」と「幾何平均」があります。
平均も計算の仕方で意味が変わってきます。
この2つの平均についてみていきます。
【算術平均】
ある株式の収益率が次のようだった場合
1年目 +70%
2年目 +30%
1年目は+70%、2年目は+30%だった場合、
算術平均で計算すると、平均収益率は50%になります。
右(黄色のグラフ)は1年目も2年目も+50%の場合です。
左(青色のグラフ)と高さの合計は同じとなります。
〇の部分をならしたのが右のグラフという感じです。
算術平均は、日常的によく使っている平均です。
「足し算」して「割り算」します。
計算が単純、簡単にできるのがメリットですが、年ごとの価格の変動幅が反映されないのがデメリットです。
言い換えれば「価格の変動幅=リスクが反映されでいない」とうことです。
【幾何平均】
幾何平均は元本が何倍になったか?を計算して、平均を算出します。
1年目 +70%
2年目 +30%
1×1.70×1.30=2.21
1年目は元本が1.7倍になり、2年目は1.7倍の元本が1.3倍となりますから、合計で2.21倍です。
2年間で2.21倍になっていますが、平均すると何倍ずつ伸びたのでしょうか?
伸び率×伸び率=2.21
を計算すれば、平均の伸び率が算出できます。
2.21を平方根( √ ) を計算すると、
√2.21 = 1.49
となります。
この平均の伸び率が幾何平均です。
幾何平均では価格の変動(リスク)が平均収益率に反映されていることがわかります。
次にマイナスの収益率が含まれる場合の算術平均と幾何平均の違いをみていきます。
次のデータは、ある株式の収益率のデータです。
1年目 +10%
2年目 -20%
3年目 +20%
4年目 -10%
このときの平均収益率を算術平均と幾何平均で計算してみます。
算術平均
10%+(-20%)+20%+(-10%)/4=0%
年当たりの平均収益率は0%
幾何平均
仮に 最初の株価を10,000円とします
1年目
10,000円×(100%+10%)=11,000円
2年目
11,000円×(100%-20%)=8,800円
3年目
8,800円×(100%+20%)=10,560円
4年目
10,560円×(100%-10%)=9,504円
購入価格が何倍になっているか?は以下のようになります。
=0.987362・・・
≒0.987
0.987-1=-0.126%
この図では4年目の結果が同じです。投資額に対して0.954倍となりマイナスとなっています。
右(緑のグラフ)は幾何平均のグラフです。
毎年 -1.26%の複利です
また、これは以下のような計算と同じ結果です
年当たりの平均収益率を r% とすると
10,000円×(100%+r%)×(100%+r%)×(100%+r%)×(100%+r%)=9,504円
ということです。
(100%+r%)^4 =9504/1000 ^4 は 4乗の意味です
r=-1.26%
年当たりの平均収益率は -1.26% になります。
Excelであれば関数で簡単に算出できます
POWER関数は数字のべき乗を求める関数です
期末価格(9,504)/期首価格(10,000) の1/4 乗しています
GEOMEAM関数は幾何平均を求める関数です
110%×80%×120%×90% の幾何平均を求めています。
■算術平均と幾何平均
1年目 +10%
2年目 -20%
3年目 +20%
4年目 -10%
この事例では、算術平均は 0% ですが 幾何平均では-1.26% とマイナスになっています。
マイナスがはいると、同じ率で増えても元には戻りません。
マイナス分を超える伸び率がないと戻らないのです。
価格の変動の影響です。
「リスクはリターンを蝕む」
「リスクをとりすぎると、リターンは得られない」
と言われていますが、このことを指しています。
過去の実績から収益率(リターン)を算出する場合は「幾何平均」を使用します
将来の予測である期待収益率を算出する場合は「算術平均」を使用します。
幾何平均の持つ意味は、再投資を前提とした複利の計算にある。幾何平均を公式的に表せば、以下の関係を満たすRgと定義される。
(1+Rg)=(1+R1)(1+R2)・・・(1+Rt)・・・(1+Rn)
注記:Rtは各期の1期間あたりの収益率
幾何平均は、過去の収益率を表すものとして、算術平均より優れている。幾何平均の積み重ねが過去の実際のパフォーマンスと一致する。たとえば、1年目の収益率が100%、2年目が−50%であったとする。幾何平均は、(1+Rg)2=(1+100/100)(1−50/100)=1であるから、Rg=0 となる。期初に100の資金でスタートした場合、2年目末の資金残高も100で、幾何平均による結果と一致する。算術平均による結果では、(100−50)/2=25%となり、運用の結果を正しく表すことができない。
一方、算術平均は、これからの投資のパフォーマンスを考えるときに優っている点がある。たとえば、ある投資案件の収益率が100%か−50%のいずれかで、それぞれの生起確率は0.5ずつであるとする。その場合の期待収益率は、(100−50)/2=25%である。一方、幾何平均では0となり、この状況を正しく表すことができない。
なお、算術平均は幾何平均よりも必ず大きくなります
証明は以下の算式を参照下さい
家計の見直しのご相談を承っております
家計の見直し・住宅ローン借り換えのご相談はコチラのフォームでご連絡ください。
ご相談希望の方は、こちらのフォームから問い合わせください。
個人型確定拠出年金(iDeCo イデコ)の相談受け付け中です
個人型も企業型のどちらもご相談承っております
ご相談希望の方は、こちらのフォームから問い合わせください。